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【フォトレポート】Dia Beacon(ディア・ビーコン)2026|ニューヨーク州ビーコン

煉瓦の壁に大きな窓が続く、木の床の長いギャラリー。右に藁縄の山、中央奥に白く半透明のブロックを並べた低い囲いが置かれている

ニューヨーク、グランド・セントラル駅からメトロノース鉄道のハドソン線で、北へ約80分。ニューヨーク州ビーコンにある美術館、ディア・ビーコン(Dia Beacon)を訪ねてきました。

訪れたのは月曜日です。ディア・ビーコンの開館日は金曜から月曜までの4日間で、火曜から木曜は休館しています。

ハドソン川沿いを北へ

線路はハドソン川の東岸を走るので、進行方向の左側に座ると、ほとんどずっと川を眺めながら向かうことができます。同乗している他の乗客も大半が左側のシートに座っています。

ビーコンの少し手前では、川に浮かぶ小さな島の上に、バナーマン城の廃墟が見えてきます。

青空の下に広がるハドソン川。対岸の山並みの手前に木々に覆われた小島があり、その上に石造りの建物の廃墟が見える。手前には線路脇の草むら
ハドソン線の車窓。ビーコンの手前、川に浮かぶ小島にバナーマン城の廃墟が見えます
駅のホームに立つ「Beacon」の駅名標。屋根の下にベンチが並び、奥に銀色の車両が停まっている
メトロノース鉄道のビーコン駅

駅から美術館までは、川沿いを歩いて約10分ほどです。無料の巡回バスも走っているそうですが、私たちの訪問時には稼働していないようでした。

もとはナビスコの印刷工場

建物は、1929年にナビスコが建てた、お菓子の箱を印刷する工場でした。延床面積は約2万8,000平方メートルあり、2003年に美術館として生まれ変わりました。

芝生の奥に建つ、窓の少ない横長の煉瓦造りの建物。中央に入口がある
ディア・ビーコンの外観。1929年にナビスコが建てた箱の印刷工場を改修しています

Dia がこの建物を選んだのは、柱と柱の間隔が広く、屋根にたくさんの天窓が並んでいたからだそうです。天窓の面積は合わせて3,000平方メートルを超え、館は自然光で作品を見せる美術館であることをうたっています。改修の基本計画を手がけたのは建築家ではなく、アーティストのロバート・アーウィンでした。ちなみに Dia という名前は、ギリシャ語で「〜を通して」という意味の言葉からとられています。

日本語で読めるディア・ビーコンの紹介記事には、ダン・フラヴィンの蛍光灯の作品や、アンディ・ウォーホルの《Shadows》がよく登場します。ただ、訪ねた日にはどちらも展示されていませんでした。フラヴィンの展示は2024年9月23日に、《Shadows》は2026年7月6日に終了しています。コレクションを見せる美術館ですが、展示は少しずつ入れ替わっているので、これから行く方は公式サイトで最新の展示内容を確認しておくと安心です。

天井から吊られた93枚のバナー

入口を入ってすぐの中央のギャラリーでは、ルネ・グリーンの個展「The Equator Has Moved」が開かれていました(2026年10月12日まで)。

天井から吊られた色とりどりの布は《Space Poem #14 (Long Poem in Four Parts)》(2025)という作品で、93枚のバナーそれぞれに短い言葉が刷られています。床に置かれた色布の衝立《Bichos》は、中に入って映像を見たり音を聞いたりするための小さな空間になっています。

天窓のある白いギャラリー。天井から緑・青・赤紫など色とりどりの四角い布が何十枚も吊られ、木の床の上に色布を張った衝立が立っている
ルネ・グリーン「The Equator Has Moved」の展示風景。天井から《Space Poem #14 (Long Poem in Four Parts)》2025のバナーが吊られ、床に色布の衝立《Bichos》が立ちます

ソル・ルウィットの壁画

ソル・ルウィットの《Wall Drawing #411》は、灰色の濃淡で塗り分けた立体が、壁から浮かび上がって見える作品です。

ルウィットの壁画は、作家が書いた指示書をもとに、別の人が壁に描いて完成させます。この作品を描いたのは Hidemi Nomura と Jo Watanabe の2人で、開館した2003年に制作されました。

白い壁3面に、灰色の濃淡で塗り分けた大きな多面体が一つずつ描かれている。床は灰色のコンクリート
ソル・ルウィット《Wall Drawing #411》

床に開いた深さ6メートルの穴

マイケル・ハイザーの《North, East, South, West》(1967/2002)は、ギャラリーの床そのものを掘り込んだ作品です。円錐形や立方体、三角形の溝の形をした穴が並び、全長は約38メートル、深さは約6メートルに及びます。とにかくスケールの大きな作品が展示されています。

煉瓦の壁と大きな窓の並ぶギャラリーの床に、黒々とした円形の穴と、その奥に四角い穴が開いている
マイケル・ハイザー《North, East, South, West》1967/2002
上からのぞき込んだ四角い穴。内側は黒い鋼板で覆われ、底にさらに小さな四角い穴が開いている。奥の床にも円形の穴が見える
《North, East, South, West》の四角い穴。大きな立方体の底に、もう一段小さな立方体の穴が続きます

会場の解説によると、ハイザーは、見る人に畏怖の念を抱かせる彫刻は小さな作品では実現できないと考えていたそうです。穴の縁はガラスの柵で囲われていますが、のぞき込むと足がすくむほどの大きさで、解説はこの危うさが作品の体験をより強いものにしていると説明しています。

灰色の鏡に映る天窓

ゲルハルト・リヒターの《Six Gray Mirrors》(2003)は、灰色のエナメルを塗った強化ガラス6枚からなる作品です。鏡のように部屋の様子を映しますが、映り込んだ景色はどれも暗く沈んで見えます。

コンクリートの床の展示室。壁に大きな灰色のガラス板が掛かり、天窓の格子が暗く映り込んでいる。中央に白いベンチ
ゲルハルト・リヒター《Six Gray Mirrors》2003

菅木志雄

窓が並ぶ長いギャラリーでは、2025年7月から菅木志雄さんの展示が続いています。2026年8月7日には、展示室がもう1室増えました。

藁縄を積み上げた《Fieldology》(1974/2025)や、パラフィンのブロックで囲った《Parallel Strata》(1969/2025)、コンクリートと機械油を使った《Soft Concrete》(1970/2025)などが並んでいます。制作年が2つ書かれているのは、2025年に作品が再制作されたためです。

煉瓦の壁に大きな窓が続く、木の床の長いギャラリー。右に藁縄の山、中央奥に白く半透明のブロックを並べた低い囲いが置かれている
菅木志雄の展示風景。右手前に藁縄を積んだ《Fieldology》1974/2025、奥にパラフィンのブロックで囲った《Parallel Strata》1969/2025
窓の並ぶ明るいギャラリーの手前に、黒い鉄板で囲った四角い塊があり、その周りの床に黒い砂のようなものが広がっている
手前は菅木志雄《Soft Concrete》1970/2025。鋼板で囲ったコンクリートと機械油が、床に黒く流れ出ています

10月24日には、マンハッタンのディア・チェルシーで、菅さんと同時代の日本の作家をテーマにしたトークも予定されているそうです。

作家から寄贈された李禹煥の絵画

李禹煥の展示は、2026年5月に始まりました。1970年代から90年代初めにかけての絵画8点は、作家本人から Dia に寄贈されたものです。

絵画は《With Winds》(1991)や《From Point》(1975、1980)など。同じ展示では、鉄板の上でロープをかけた丸太が斜めに立つ《Relatum(関係項)》(1974/2019)も見ることができます。

天窓の下の白い壁に絵画が3点、間隔を空けて掛かっている。左は四隅に灰色の筆跡、中央は淡い色の縦長の画面、右は黄土色の地に筆の点が規則正しく並ぶ
李禹煥の展示風景。左から《With Winds》1991、《From Point》1975、《From Point》1980
木の床に置かれた黒い鉄板の上に、ロープをかけた丸太が斜めに立ち、ロープは天井へと伸びている。奥の壁に黄色い絵画
李禹煥《Relatum(関係項)》1974/2019

宙に浮かぶオレンジの板

エリオ・オイチシカの《Grande Núcleo(Grand Nucleus)》(1960–66)では、黄色やオレンジの板が天井から吊られ、白い砂利の上に浮かんでいるように見えます。

壁には、同じ時期に制作された《Relevos Espaciais(空間レリーフ)》も展示されています。展示は2025年12月から続いており、企画は Dia の副ディレクターを務めるウンベルト・モロです。

白い砂利を敷いた床の上に、黄色やオレンジの四角い板がいくつも宙に吊られて重なっている。天井近くには木の格子枠が吊られている
エリオ・オイチシカ《Grande Núcleo(Grand Nucleus)》1960–66

河原温「Today」シリーズ

河原温さんの部屋には、日付だけを描いた「Today」シリーズの作品が、1966年から2000年までの36点並んでいます。

日付は、その絵を描いた土地の言葉で書かれ、ローマ字を使わない国ではエスペラント語が使われます。「18 MAI 2000」はフランス語、「4 AŬG.1984」はエスペラント語(アルファベットを使わない国の場合に使われる)です。この部屋の床下には、作家の指定で日本の白炭が敷かれているそうです。

白い壁に、黒や紺の小さな横長のキャンバスが目の高さで一列に並んでいる。床は木
河原温「Today」シリーズの展示室

リチャード・タトル

2026年7月末に始まったリチャード・タトルの個展「Half-Light」では、生成りの布と色のついた小さなオブジェを組み合わせた《Good Idea, 1–80》(2025–26)が、壁から床にかけて散らばるように展示されていました。

天窓の下の長い白壁に、生成りの布と色のついた小さなオブジェが散らばるように掛けられている
リチャード・タトル《Good Idea, 1–80》2025–26 の展示風景

チェンバレン

いちばん奥にある長いギャラリーには、ジョン・チェンバレンの彫刻が並んでいます。潰れた車のボディを組み合わせた作品や、ウレタンフォームを縛って形づくった黄色い彫刻などで、2028年まで展示される予定です。

天窓と白い柱のあるギャラリー。白い台座の上に黄色い塊状の彫刻がいくつも置かれ、奥に通路が続いている
ジョン・チェンバレンの展示風景。台座の上に、ウレタンフォームを縛った黄色い彫刻が並びます

謝徳慶|Tehching Hsieh(地下)

地下へ下りる階段室の壁には、ローレンス・ウェイナーの言葉の作品《ONE QUART EXTERIOR GREEN INDUSTRIAL ENAMEL THROWN ON A BRICK WALL》(1968)が書かれています。「屋外用の緑の工業用エナメル1クォートを、煉瓦の壁に投げつけた」という意味の一文です。

白い壁の上の方に、緑色の大文字で英語の一文が横に書かれている
地下へ下りる階段室に書かれた、ローレンス・ウェイナー《ONE QUART EXTERIOR GREEN INDUSTRIAL ENAMEL THROWN ON A BRICK WALL》1968

地下の広いコンクリートの空間は、台湾出身のアーティスト、謝徳慶(Tehching Hsieh)ひとりの展示に使われています。1年がかりの作品5つをまとめて見られる貴重な機会で、こちらは別の記事で詳しくご紹介しています。
【フォトレポート】特異なアート「One Year Performance」 ― 謝徳慶「Lifeworks 1978–1999」|Dia Beacon

10月からはヤン・ヘギュの新作

訪ねた日、ラリー・ベルの部屋(8月24日に展示終了)は仮設の壁で閉じられていました。中では、10月10日に開幕するヤン・ヘギュの個展「Through」の準備が進んでいます。

地上と地下の両方にまたがる新作で、ディア・ビーコンの2つのフロアを使って展示する作家は、ヤン・ヘギュが初めてだそうです。展覧会名の「Through」は、Dia という名前の由来と同じ意味の言葉です。

充実した館内の書店

館内の書店は、美術館のショップというより専門書店のような品揃えです。河原温さんの本や『Donald Judd Interviews』、イミ・クネーベルがランス大聖堂のために制作したステンドグラスの本など、展示と関わりのある本が棚に並んでいました。館内にはカフェもあります。

木の本棚と平台に美術書がぎっしり並ぶ書店。奥に窓がある
館内の書店

訪れるなら

開館は金曜から月曜の10時から17時で、季節によって閉館時間が変わります。入館は16時30分まで。入館料は一般25ドル、65歳以上18ドル、学生12ドルです。

地下の展示は、作家本人によると、ひと通り見るだけで2時間ほどかかるそうです。地上の展示を見終えたあとの時間にも余裕をもって、出かけてみてください。

文・写真:art on 編集部

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