
浅間山の南麓、長野県御代田町。しなの鉄道の御代田駅から歩いて10分ほどの緩い坂の上に、MMoP という複合施設があります。芝生とグラス類の植栽が広がる敷地に、大きくプリントされた写真が屋外に展示されています。
浅間国際フォトフェスティバル2026 PHOTO MIYOTA、今年のテーマは「After the Image|イメージのその後」です。
写真はシャッターが切られた瞬間に完成するのではなく、見られ、共有され、記憶されていくなかで意味を変え続ける——そういうテーマを掲げた展示です。だからこのフォトフェスティバルは、写真をツタの壁に展示し、林の中に吊り、芝生に立て、風と雨と光に晒される場所に転じます。参加作家は国内外22組・展示作品数は約300点。
ツタの壁に、子どもたちが並ぶ
入ってまず目に入るのが、ツタに覆われた建物の壁面いっぱいに掛けられた大判のプリント群です。デンマークの写真家・映像作家ヘンリエッテ・サブロー・エベセンの《Growing Up》(2017–)。今年のキービジュアルもこの作品から採用されました。

父親のアルバムに残っていた古い家族写真と、彼女自身がいま撮っている写真を、コラージュとして重ねていく仕事です。だからこの壁の前では、二つの時間が同じ画面のなかで押し合っています。ひまわりに囲まれたスーツの男、口紅のような唇がタイル状に反復する画面、動物の顔をした誰か。どれも「家族写真」という言葉から想像するものからは、少しずつずれていきます。




人の輪郭と、花火の粒子
展示室に入ると、正面に黒い衝立状の構造体が立っています。スウェーデン出身で東京在住のヨーガン・アクセルバル《Most likely the flames will destroy themselves / Looking Up》です。

ぼんやりと浮かび上がる人の輪郭と、花火の鮮やかな爆発が散っていく瞬間のクローズアップが、同じ視界に並んでいます。どちらもポラロイドを大きく引き伸ばしたもので、フィルムの粒子やノイズまでが見えるようにしてあります。オレンジから黄へ流れる強い色の地に、白く抜かれた人影。輪郭だけなので、顔も服も分かりません。

奥に吊られた大幕はタイヨ・オノラト&ニコ・クレブス《Water Column》。紅海の研究施設でのレジデンシーから生まれた作品で、水中カメラと顔料とフォトグラムを使い、サンゴや貝殻を既存の写真の前に置いて撮り直しています。ピンクの粒が一面に散って中央に黒い円が空いた一点と、金と緑が渦を巻く一点。天井のトラスが剥き出しの空間なので、視線を上げないと全体が入ってきません。
林のなかでの展示
建物の裏手にまわると、林の小径に沿って大きな布が何枚も吊られています。こちらもヨーガン・アクセルバルの作品で、《Looking Up》です。ソラリゼーションの技法で、東京の空を横切る飛行機を撮ったシリーズ。
布は半透明で、後ろの木立が透けますし、風が吹けば揺れて、空の写真の上を本物の枝の影が渡っていきます。東京の空を撮った写真が、御代田の空に浮かび上がります。


古い民族誌写真に、ゴジラが立っている
芝生にイーゼル状のパネルが点在するエリアです。ブラジル・アマゾンのバニワ族出身の作家デニウソン・バニワ《Colonial Fictions》(2021)。

19世紀から20世紀初頭にかけて、西洋の探検隊や人類学者が「未開の民」を記録するために撮った写真です。そこにキングコング、ゴジラ、エイリアン、クラーケンといった映画のイメージが堂々と合成されています。


庭を歩く




会場は、東京から新幹線と在来線で1時間半、軽井沢からなら電車で20分のロケーションです。
9月27日まで。1,500円で会期中は何度でも入れるので、夏と初秋の光の違いを見に、二度行く楽しみもあるかもしれません。
